こんにちは、バーチャルオフィス博士じゃ。
法人を設立することにしたが、事務所を借りるほどお金がないわけではないし、ネット専業だから物理の事務所が必要というわけでもない人にとって、バーチャルオフィスは大きな味方といえる存在です。しかし、バーチャルオフィスを選ぶにあたって落とし穴が、がっつりあるのをご存知ですか?
知っているか否かで大損するかの運命の分かれ道。とても重要な情報なので、今回の記事でバーチャルオフィスで法人登記をしたい方に必要な知識を解説します。
この記事は回避できる落とし穴に嵌りたくない人にお勧めじゃ。
バーチャルオフィスとの契約での落とし穴
バーチャルオフィスと契約できない業種
どの業種でバーチャルオフィスと契約しようとしてますか?その業種だとバーチャルオフィスの規約で入会を拒否されたり、発覚後契約取消になることもあります。また法律上、バーチャルオフィスでは許認可が降りない業種もありますよ。
規約上バーチャルオフィスが禁止にしている業種
転売・せどり、情報商材でバーチャルオフィスを利用しようかと思っている人が多いかもしれません。しかし、一部のバーチャルオフィスでは規約で禁止されているのをご存知でしょうか。
よくある質問や利用規約を読み込んでおかないと気付くことができません。多くのバーチャルオフィスで転売・せどり、情報商材での利用も可能なので、すべてのバーチャルオフィスで利用可能だろうという思い込みをしがちなので注意が必要です。
以下のリストで自分の業種が当てはまっている場合は、事前に契約を検討しているバーチャルオフィスに契約可能か問い合わせましょう。
- 転売
- 情報販売
- アダルトサイト・出会い系サイト
- マルチ商法
- ギャンブル
- 合法ドラッグ
法律上バーチャルオフィスが難しい業種
法律上、バーチャルオフィスを事務所として許認可が降りない又は難しい業種があります。詳細は、別途記事にしていますので参考にしてください。
既に同名の会社が利用している場合契約できない
同名の会社が既にバーチャルオフィスに入会している場合、審査で確実に落とされます。金額面での損失はありませんが、必ず契約できると思って余裕のないスケジュールを組んでいたら、契約できない可能性があり危険です。ではなぜ審査で落とされるのでしょうか。その理由を確認しましょう。
バーチャルオフィスの運営上の理由
バーチャルオフィスでは、同名の会社が既に登録されている場合、郵便物の区別がつかないため、入会を拒否されます。これを解決するために、バーチャルオフィスの住所の末尾に利用者の識別番号を付与するというアイデアがあります。例えば、「東京都千代田区永田町1-7-1-303-vo001」のようにです。
この方法であれば、バーチャルオフィス事業者側は郵便物の区別をつけることができます。しかし、郵便物を送付する側や、ホームページで住所を見た人がどう思うでしょうか。明らかに私書箱やバーチャルオフィスの住所だと判断されてしまう可能性が高いでしょう。
バーチャルオフィスでは、同名の会社が既に登録されている場合、郵便物の区別がつかないため、後発の契約は拒否されます。これは、利用者としては、住所が一見してバーチャルオフィスであるとバレるなら利用する価値がほとんどないためです。
そのため、バーチャルオフィス事業者側としては識別番号をつけることはできず、同名の会社で重複しそうな場合は、後発の契約をお断りせざるを得ないのです。
一方、バーチャルオフィスが複数の店舗を有している場合は、店舗で重複していなければ入会可能と思うかもしれません。しかし、郵便物を一箇所に集めて仕分けする業者もあるので、一概に可能とはいえません。
法律上の理由
世の中には、同名の会社は数多く存在します。しかし、同一の本店所在地に同じ商号の会社がある場合には、そもそも登記ができません。そのため、同じ住所に同名の会社は法律上存在し得ません。そのため、審査で確実に落とされます。
ただし、同一の住所でなければ、都道府県あるいは町内に同名の会社があったとしても、登記は可能です。そのため、バーチャルオフィスが複数の店舗を有している場合、住所が重複していなければ入会可能な場合があります。ただし、上記運営上の理由もあるので、絶対ではありません。
事前に回避する方法
バーチャルオフィスの利用を検討する際には、事前に同名の会社が同じ住所に存在しないかどうかを確認することが重要です。なぜなら、同名の会社が存在すると、バーチャルオフィスの審査で落とされてしまう可能性があるからです。
バーチャルオフィスの契約前に使用できる住所は、ある程度公開されています。しかし、郵便物が届くための正確な住所は公開されていません。正確な住所がわからない以上、事前に同名の会社がいるかどうかチェックする方法はなさそうです。
しかし、国税庁法人番号公表サイトを利用すれば、ある程度事前に同名の会社がいるかどうかを予測することができます。同名の会社名で検索をかければ、ヒットした法人の住所とバーチャルオフィスの店の住所が近い場合、同名の会社が存在する可能性が高いと判断できます。
国税庁法人番号公表サイトを活用すべし
バーチャルオフィス契約中での落とし穴
バーチャルオフィスの業者は、中途でサービス終了するケースが少なくありません。詳細は、別途記事にしていますので、ぜひ参考にしてください。
倒産またはサービスを全面撤退する可能性が高いバーチャルオフィスの見分け方
法人登記の住所としてバーチャルオフィスを利用する場合は、その経営基盤が長期安定していることが非常に重要です。リスクの高い業者の見分け方と回避方法については、別途記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
郵便を直接受け取れないバーチャルオフィスの落とし穴
遠方から都心の一等地に本社を置きたいと考えている方は、すぐに考えを改めましょう。近年、普通郵便の配達が遅延するケースが増えています。そのため、発送元からバーチャルオフィスを経由して自宅に郵便物が届くまで、1週間以上かかることも珍しくありません。
社会保険料の納付期限、取引先との契約期限が迫っているとき、災害で輸送交通機関が麻痺しているときなど、直接受取に行けないバーチャルオフィスは、不測の事態に対処することができないため、絶対に避けたほうがよいでしょう。
社会保険料振込期限超過
社会保険料の口座振替は、多くのネット銀行で対応していないことをご存知でしょうか。ネット銀行の法人口座しか開設していない場合、社会保険料の口座振替はできず、必然的に振込となります。振込用紙は、毎月20日頃に発送され、概ね25日から27日にバーチャルオフィスに到着します。その後、利用者の元に転送されます。
日数の少ない月(例:2月)によっては、バーチャルオフィスを経由すると、速達で送っても月末の期限までに間に合わなくなる可能性があります。そのため、直接回収に行く必要があります。しかし、もし回収できなければ、期限に間に合わなくなり、日本年金機構から不要な調査を招くかもしれません。
商談機会の喪失
でかい商談は、電話やメールではなく手紙でアプローチしてくることが多いのはご存知でしょうか。その理由は、時間を強制的に奪う電話は相手に迷惑がられて着信拒否され、メールだと即迷惑フィルターを付けられてゴミ箱行きになってしまうためです。また、ダイレクトメールも郵送で送られてくることがありますが、費用対効果が悪いため、少ない傾向にあります。
そのため、どうしてもアプローチしたい重要な会社に対して、決済者や経営者にダイレクトに届きやすい手段として手紙を活用するのです。実際、業務提携やM&Aなど、利益の大きい商談は、手紙と資料を添えてアプローチしてくる場合が多いです。
この場合、相手方の都合上期限がありますので、直接郵便物を返送したりしないと信用がなくなる場合もあり、直接郵便物を回収して、素早く返信する必要があります。
バーチャルオフィスは最悪自転車で行ける場所が理想じゃ
特定商取引法に基づく表記に使えるのに使えないバーチャルオフィスの落とし穴
もしバーチャルオフィスの広告に「特定商取引法に基づく表記に使える」と明記してあったのに、実際に契約してみると、「特定商取引法に基づく表記に使えません」となってしまう落とし穴があります。これは、バーチャルオフィスの住所を画像でしか使ってはいけない規約があるという落とし穴です。
この規約があると自分のホームページでは特定商取引法に基づく表記に使えますが、特定商取引法に基づく表記としてテキストの住所の入力が求められるモールには、バーチャルオフィスの規約上、出店することができません。
バーチャルオフィスでは、住所が汚れるのを嫌います。住所で検索すると同じ住所の業者がたくさん存在していたり、スパム業者だらけになったら誰もバーチャルオフィスを利用したいと思わなくなるからです。そのため、検索エンジン対策として画像でのみ住所を利用できることを許可しています。
アマゾンなどのモールなどのプラットフォーマーの元で公開される住所に、バーチャルオフィスの住所を利用したい場合は、バーチャルオフィス業者の規約をよく確認しましょう。「テキストで住所が利用できるか」を確認することが重要なポイントです。
メジャーな落とし穴じゃ
貸し会議室がないバーチャルオフィスの落とし穴
バーチャルオフィスで貸し会議室をオプションで付けられない業者は、避けなければなりません。特に、銀行から融資を受ける必要がある場合や、税務調査を受ける場所として貸し会議室は本店に確保しておく必要があります。
銀行融資
融資面談が必要な銀行に融資を相談した場合は、本店の事務所で行われることがあります。銀行員は、融資対象者について、人間性や物理的な事務所の状況を調べるために、面談を行います。そこで事務所で面談ができず、別の場所で面談を提案された場合、銀行員からすれば、なぜだろうとまず思います。
銀行側も、融資対象者がバーチャルオフィスを利用する可能性が高いことは事前に調べています。その点、既にハードルが上がっているところ、事務所で面談の場も設けることができない事業者ということになると、いい返事が期待できるわけがありません。
銀行融資を検討している場合は、貸し会議室があることはもちろん、相手が融資したいと思えるようなバーチャルオフィスの見栄えがある場所を選ぶ必要があります。
税務調査
銀行の場合は、融資を受けなければ貸し会議室の必要性はありません。しかし、税務調査の場合は、貸し会議室の利用が必須です。税務調査は会社本店の会議室で、モニター、パソコン、プリンター、数年分の税務証憑を事前に用意して行われます。
そこで、バーチャルオフィスに貸し会議室がオプションでついていないと、自宅や別の場所にすべての必要機材を確保しなければなりません。もちろん、事情を説明した上で、本店住所ではない貸し会議室を別途借りて税務調査を受けることも相談次第で可能です。
ただ税務署の管轄内に貸し会議室があるのか、必要機材と作業スペースが確保できる貸し会議室を確保できるのか、という問題があります。また、バーチャルオフィスの貸し会議室は必要機材が揃っており割安な価格に設定されていることが多いため、臨時で貸し会議室を別業者に確保すると、多額の出費を伴うことになります。
バーチャルオフィスで貸し会議室は、ほとんど使う予定がない人も多いと思いますが、特に法人では登記されているお店に貸し会議室が用意されているかどうかは、かなり重要な確認事項ですので、必ずチェックするようにしましょう。
貸し会議室のないバーチャルオフィスは回避じゃ
法定書類を保管できないバーチャルオフィスの落とし穴
定款、株主名簿、計算書類等
もし法人が株式会社だった場合は、代表的なものでいうと定款(会社法31条)や株主名簿(会社法125条)計算書類等(会社法442条)が書面をもって作成されているときは、本店に備え置かなければなりません。もちろんバーチャルオフィスであっても本店に備え置かないといけません。
その点、バーチャルオフィスで法人登記をする場合は、法定書類保管サービスの確認もしないといけないのですがホームページをよく見ても、該当しそうなサービスが見当たらない場合があります。
株主名簿でいうと閲覧を請求してくる株主や債権者がいる場合、正当な理由があれば、営業時間内は、いつでも開示し閲覧させなければなりません。そのため、法定書類の保管サービスがないバーチャルオフィスでは、そこで詰むことになります。
バーチャルオフィスでは、法定書類の保管サービスを表立って謳っていないケースがあります。しかし、事前に問い合わせてみると預かってくれる場合もありますので、契約前に必ず確認しましょう。
社会保険
バーチャルオフィスで法人登記をしようとする人には、一人法人が多いのではないでしょうか。代表取締役社長しかいない場合であっても、社会保険(健康保険、厚生年金)に加入しなければいけません。
バーチャルオフィスで社会保険に加入できないのかというと、協会けんぽであれば全く問題ありません。しかし、健康保険組合の場合は独自の加入条件があるため、バーチャルオフィスでは入会できない場合があります。ただし、協会けんぽに入会できるので、実務上問題になることはありません。
どうしても健康保険組合に入りたい場合は、バーチャルオフィスで入会ができないか確認をとるとよいでしょう。
また、年金事務所の中には、会社の所在地に、書類の保管場所が確保されているかどうか聞かれる場合があります。その場合、バーチャルオフィスに法定書類の保管ができるサービスがない場合は、他のバーチャルオフィスに変更する必要があるかもしれません。
ただし、これはネットに流れている情報に過ぎないことも付け加えておきます。少なくとも私は、書類の保管場所が確保されているかどうか年金事務所から聞かれたという体験談を今まで聞いたことはありません。
不安な方は、実際に管轄の協会けんぽ(年金事務所)に電話してみるとよいでしょう。その方が確実です。株主名簿もそうですが、法定書類を備置しなければならない場合があります。そのため、本店所在地に法定書類の保管ができるサービスがないバーチャルオフィスは選ぶべきではありません。
法定書類の保管サービスのないバーチャルオフィスも回避じゃ
固定電話番号が取得できない落とし穴
バーチャルオフィスで法人登記をすると、固定電話番号が取得できないのはご存知でしょうか。法改正により、バーチャルオフィスで法人登記をした場合、固定電話番号を取得することができなくなりました。そのため、バーチャルオフィスの電話転送サービスでも、03plusに代表されるクラウドの固定電話番号も利用できません。
バーチャルオフィスで法人登記をすると、サービスの特性上、物理的に固定電話を実際に引くことができません。そのため、これまでは電話転送サービスで固定電話番号を取得するという流れになっていました。
しかし、法改正により、固定電話番号を転送する業者は利用者に対してより厳格な本人確認が必要になりました。その影響で、法人登記をしている住所がバーチャルオフィスだと、NGになりました。
以下固定電話番号の転送電話サービスで有名な03plusホームページより引用です。
この度、弊社サービスでは「バーチャルオフィス」の住所については、その地域の固定電話番号を提供しないこととなりましたので、お知らせいたします。該当するお客様にはご不便をお掛け致しますが、何卒ご理解の程、宜しくお願い致します。
03plus バーチャルオフィスをご利用のお客様へ重要なご案内
実際に固定電話を引くことができず、転送電話サービスも使えないということから、現在バーチャルオフィスで法人登記をすると、固定電話番号を取得することはできません。
では、固定電話番号を取得できないとどうなるのでしょうか。代替手段である050番号があるので、実務上問題になることはほぼないでしょう。しかし、固定電話番号の入力が必須の銀行では、法人口座を開設することができなくなります。
法人にとって、銀行口座は業務を開始するために必須のものです。開設できなければ、業務を開始できず、死活問題になります。しかし、幸いなことに、代表取締役の携帯番号や050(IP電話)でも法人口座を開設できる銀行が増えてきています。そのため、今のところ固定電話番号がなくても、法人口座開設の道は絶たれていません。
しかし、今度は050番号でも本人確認が必須になる法改正が待っています。内容はまだ不透明ですが、仮に050番号においてもバーチャルオフィスの住所が本人確認として認められないとなると、代表取締役の携帯番号が許可されている銀行しか選べない可能性が高くなります。
バーチャルオフィスでメガバンクと都市銀行の法人口座開設は非常に難関です。その点、バーチャルオフィスで法人登記をすると、開設しやすいネット系の銀行など、口座開設の選択肢が極端に狭くなります。さらに、固定電話番号必須の銀行も駄目になるので、基本的に携帯番号や050(IP電話)で開設できる銀行のみに限られることになります。
法人設立直後の期間は、実績も何もないため、決算書の提出が免除になるボーナス期間です。そのため、バーチャルオフィスで法人登記をしようとする人は、リスクヘッジの観点から、申込可能なすべての銀行に挑戦しておいた方がいいでしょう。
固定電話は作れないぞい
まとめ
疑問があったらすぐ問い合わせじゃ
バーチャルオフィスで法人登記をすることは、数十年前から行われてきた歴史がありますが、まだマイナーな設立方法であることには変わりません。また、法改正が行われてきているとはいえ、まだまだネット上のみで活動することを前提とした制度設計になっていません。そのため、さまざまなところで噛み合わせが悪く綱渡りの設立になりますので、細心の注意を払って情報収集をしてください。